かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

何でも見てやろう

時は50年代、著者の小田実氏は「何でも見てやろう」をモットーに
世界旅行へ向かいました。その壮大な旅の記録です。
500ページ近くというボリュームに読みきるのに時間がかかりましたが、
時代を感じさせるけど、感じさせない面白い本でした。


痛快!
この旅行、とにかくお金がないんです。
そこで旅先で出会った人達と仲良くなって、ただ飯や安い宿を紹介して貰ったり
3等級の安い便で旅行したりととにかく凄い行動力。
ちやほやされると大いにえばったり、困った時はにっこり笑ってごまかしたり
なんだかもう全身全霊で旅をしていてとっても痛快です。




貧乏だからこそ
貧乏ゆえに、どこの国へ行っても一般旅行客とは違う、
その国の一般庶民(時にはそれ以下)と肩を並べて過ごす日々。
だからこそ、その国の抱えているものが垣間見れます。
小田実さん自身、ぐーたらでおちゃらけて旅をしているように書いていますが、
元々秀才なだけあって、彼の鋭い考察が随所に光ります。
人種問題、政治問題……それらは50年も前の話なのに
今と全く同じ側面を持っている気がします。



世界をみるということ
旅が終わり、小田さんの文章から、世界を回ってきた彼の
人間としての成長(元々とんでもない行動力の持ち主でしたが……)が、
読んでいるこっちまで伝わってきました。



グローバル化が進み、彼が旅をした当時より世界はずっと近くなった
と思います。旅行も気軽に行けます。
それでも、「何でもみてやろう」の精神で歩き回らないと、
それぞれの国が抱えている本当の問題は、わからないのだと思いました。



何でも見てやろう (講談社文庫 お 3-5)何でも見てやろう (講談社文庫 お 3-5)
小田 実

講談社
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