天風浪々 絵と書の対話 を読みました。
両人とも近年亡くなられております。
榊莫山の方は、僕はあまり詳しくないのですが
元永定正の方は大がいくつついてもおじけづかないほど好きな作家です。
(もこもこもこ、などの絵本作品の方が有名かも知れません)
そんな元永さんの文章が一冊の本になっている唯一の書物がこの
天風浪々で、ワクワクしながら読みました。
絵と書の対話とありますが、そんなに堅苦しい内容ではありません。
お二人とも伊賀の出身で、方言でしかも唐突な身内話から始まるので
そういう意味では少しとっつきにくいなぁと思いながらも、先へ先へとすすめると
80年代以前の公募団体が力を占めた日本の美術の実態が浮かび上がってきます。
僕の目当てが元永さんだったのでそちら贔屓での感想ですが
本当に純粋な芸術家だったのだなぁと思いました。
どこにでもあるような作品をつくっても自分の存在はなんにもない。
自分の存在が人類にちょっとでも、退屈を紛らわすあるいは楽しむような空間を
つくるには誰もやっていないことを考える
“自分の哲学”をしっかりもった言葉にはこちらも何だか励まされてしまいます。
何より楽観主義なところが気持ちいいです。(これはお二人ともですね)
そして、日本の美術(書)の教育に対する嘆き。みることよりも描くことに重きをおいて、良いものをみる感覚が磨かれずに大人になってしまう。
20年以上前の本なのに残念ながら改善されていないように思います。
(絵は“うまく”かくもの。このあたりについてはさらに20年前、岡本太郎が
今日の芸術でやっぱり嘆いていました。優れた画家の視点は
本質を捉えるのが上手いですね。)
日本は外のものばかり飾りたがり、自分の国の古いもの(それも
外から賞賛されたもの)ばかり誇りに思う。
でも日本の“今”のものにももっと目を向けてあげないと、評価を受けずに
自身がなくなって萎んでしまう、
この辺も今も尾を引いている気がします。
型破りなお二人にはもっともっと長生きして欲しかったと思える一冊です。
榊さんか元永さんの作品に興味を持った方はぜひ読んで下さい。
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