かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

人間は言語創造するいきものだ 記号論への招待

記号論への招待 (岩波新書)

記号論への招待 という本を読みました。
我々が普段用いている記号の中で最も身近なものであり、決して切り離すことの出来ない
“言語”を主な題材として記号の持つ役割、性質を読み明かしていきます


膨大な記号論への旅に我々を誘ってくれるとても面白い本だと思いました。
この本をざっくりまとめて紹介できる技量は僕にはないし、
聞き慣れない専門用語を出して堅苦しく紹介するよりは、


「なんで、あの人の些細な一言にこんなにも縛られて(またはうかれて)しまおうのだろう?」
「詩って何?なぜ時として論理的な書物には抽象的な詩が挿入されるのだろうか?」
「なんで子どもってあんなに突拍子もないことを言うのだろう?」
「キラキラネーム、DQNネームってたかが“名前”なのになぜあんなにも非難されるの?」
「童話や民謡って似たようなはなしが多すぎない?」


こんなたぐいの
言葉に対する素朴な悩みの一つでも持っている人に、
ちょっとしんどいコースではありますが、頑張って登山してもらいたい一冊
です。


あまり出来の良くなかった(そして今も)僕は、高校生の頃にこの本に一度出会いましたが
一度挫折しています。なんで挫折したのかなぁと考え直してみると、内容の難解さというより
上記にあげたようなもやもやした疑問もなく手にとったからかなぁと思いました。


あまりにも多角的に読めるこの本は取っ付きにくいかもしれませんが、
随所随所に素朴な疑問に対する仕組みや構造が書かれていて
それは時に、自分の知らない世界の仕組みをしってしまったような
途方もない気持ち
にさせてくれることだろうと思います。


本書は世界の見方が今までとちょっとずれる広大な記号論への“招待状”にすぎません。
もったいないと思うのは、参考文献が記されていないところでしょうか。
途方もなさすぎて次の一手に困ってしまってはしょうがないですし。


僕は言語学や記号論の専門家ではなく、かじった(かじっている)程度なのですが
下記の本なんかも読みやすいかもしれません。言語の方面ですが参考までに記しておきます。



詩とことば (岩波現代文庫)
詩とことば (岩波現代文庫)荒川 洋治

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詩人の荒川 洋治さんが詩について語った一冊。
詩の世界に興味はあるけどよくわからないよ!という人に向けて
丁寧に丁寧に、“やさしい”言葉で綴られています。



言葉と無意識 (講談社現代新書)
言葉と無意識 (講談社現代新書)丸山 圭三郎

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言語学者、丸山圭三郎氏の著作。
まさに知の冒険。ゾクゾクします。