かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

月刊美術手帖を読む 〜vol62 2010年 1月〜

美術手帖 2010年 01月号 [雑誌]
美術手帖 2010年 01月号 [雑誌]
特集は日本イラストレーション史

4つのパートと11人のイラストレーターのインタビューで60年の歴史を紐解きます。
イラストレーションの歴史には詳しくなかったのですが、興味はあったので、楽しめました。
しかし、60年の歴史を語る上ではさすがにページが足りず、そうとう
端折っているように見受けられます。時代をまたいで活躍し、
頻繁に名前が挙がる作家でも、公平に扱うためか、代表作1点しか載せられていないので、
悪く受けとれば、凄さが伝わりづらいかななんて思いました。
ですが、そのあたりのフォローはしっかりしていて、特集末尾に
関連書籍をドーンと載せているので、大まかなイラストレーション史を知るには
十分使えると思います。保存版というだけはあります。





もう1つの特集はヨーゼフ・ボイス
これは、彼の最初で最後の来日から四半世紀経った、ボイス展に合わせた特集。
ボイスについては詳しくは知らないので、彼についての知識があること前提
で書かれた特集は、僕にはあまりピンときませんでしたが、去年開かれた
この展覧会に行かなかった事が、いかにもったいない事だったかは伝わり、
なんだか損した気持ちになりました。
ボイスについてもう少しきちんと勉強して、また読み直そうかと思います。





その他気になったもの


・アートの地殻変動 中原佑介
反芸術を通り過ぎた今、作家にとって大切なのは
脱芸術だと氏は語ります。語りにくいと言っていますが、
例として挙げた川俣正の名前を聞いて、なるほどと思いました。
80歳近くして、鋭くも柔軟に現代美術を語られていてびっくりし
最後にインタビュアーがその気持ちを代弁してくれました。

戦後有数の博学な知性が、体系をつくったり、
美術界のボスにならず、現場の作品を見て回り続けることの裡に、
どのような諦念と希望があるのか

・ARTIST INTERVIEW ツァオ・フェイ
仮想世界を作品とする発想というか、
なり得てもおかしくない時代だということに、なんだか驚いた。


・評論
鈴木かよさんの油画作品が妙に印象的だった。





総評
ページの半分を占める特集を始め、なかなか情報量の多い号だと思います。
ですが特集に限らず、名前は知っているけど、詳しくは知らない名前が多く出たので、
文章をまとめてみて、情報をつかみきれなかった感が否めませんでした。
勉強不足が身にしみた号でもありました。




オン・ザ・ウェイ―川俣正のアートレスな旅
オン・ザ・ウェイ―川俣正のアートレスな旅
彼の作品をみる、というか体感してみると脱芸術って何か、わかると思います。


2011年版中村佑介カレンダー「Blue」
2011年版中村佑介カレンダー「Blue」
特集で触れられなかった若手イラストレーター。
現在進行形で独特の画風が色んな人に影響を与えていると思います。