かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

創造する人達への愛の鞭 ブルーノ・ムナーリ 芸術家とデザイナー

芸術家とデザイナー

ブルーノ・ムナーリは多彩な顔を持った作家です。
画家、グラフィックデザイナー、絵本作家、芸術家、詩人etc......


後期未来派の1人、なんて説明されても、


「派?は?」


てな感じでしょうが、
“暗い夜に”,“霧の中のサーカス”
などといった絵本作品は
知っている方も多いのではないでしょうか?

きりのなかのサーカス



そんな彼が1970年代に記したのが、この”芸術家とデザイナー”という本です。
よくごちゃまぜにされてしまう、芸術家とデザイナー
その違いは?共通点は?それをブルーノなりの視点で解き明かします。

芸術家が自身の様式(つまり”個性”ですね)をそそいだ世界に一点だけの椅子。
これは今や誰も座らない。一方デザイナーがつくった
機能を重要視した椅子は今でも人々に使われ続けている。

このような視点で芸術家の傲慢さと不当なまでのデザイナーの扱いに
メスを入れていくブルーノ。これが40年前に書かれた書物だとしても、
なんら世の中は変わっていないのだなぁと驚愕です。



彼は決してデザイナーの優位性を説きたいのではなく、芸術家を卑下したい
わけでもありません。ただ、両者に孕む疑問、矛盾をあぶり出し、
今一度再考したいのです。どっちが素晴らしいのではない。どちらもがおかしいし、
また同じくらい素晴らしいのである、文章から溢れるそんな彼の視点は、
彼の全てのクリエイターに捧ぐ”愛の鞭”なのかもしれません。