生きる事はかなしいこと-生きるかなしみ-
山田太一編の生きるかなしみを読みました。
世の中何かと前向きに明るくとか、何だって出来ると希望を持たせる情報が飛び交っていますが、
残念ながら現実は、どうしようもならない事ばかりです。かなしみだらけです。
それは誰だって本当はわかっているはずです。でも口には出しません。
口に出すと、周りにネガティヴな人間だと言われたり、嫌な奴だと煙たがられるからです。
(不況になるとお笑いブームが起こる法則も納得です。)
でも、誰もが悲しみから目をそむける生き方で本当にいいのでしょうか?
冒頭の文で太一氏はこう述べています。
私たちは少し、この世界にも他人にも自分にも期待しすぎてはいないだろうか?
本当は人間の出来ることなどたかが知れているのであり、衆知を集めてもたいしたことはなく、
ましてや一個人の出来ることなど、なにほどのことがあるだろう。
相当のことをなし遂げたつもりでも、そのはかなさに気づくのに、それほどの歳月は要さない。
そのように人間は、かなしい存在なのであり、せめてそのことを忘れずにいたいと思う。
本書は“生きるかなしみ”をテーマにして選ばれた、さまざまな作家の文章で編集されています。
僕を含めた若い世代にはなじみのない作家ばかりですが、読んでいくと太一氏の伝えたい“かなしみ”が
とても繊細で、一言では伝えづらいニュアンスのものだとわかってきます。
ただ、そこには不思議と絶望はないのです。むしろ何千何百の“前向き”な台詞よりよっぽど“救い”を感じます。
この“救い”は、あらゆる綺麗事をボロボロと崩した先にある“かなしみ”に目を向けて、
初めてみえてくるものだと思います。
誰もが嫌なものを背負い、“前向きな救い”を求めて苦しんでいるからこそ、
あえて“後ろ向きな救い”を求めてみてはどうでしょうか。
生きるかなしみ (ちくま文庫) | |
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