かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

荘子を読みました

紀元前2、3世紀前に実在した荘子という中国人の教えをまとめた本です。
今から2300年も前の人間の考えなのに、今読んでも新鮮に受け止められるのは衝撃的です。
特に例え話が秀逸で、普通の人が一歩引いたそのまた一歩後ろから物事を捉える視点には考えさせられました。






1つ現代文訳を部分的に引用します。(一部変換ででなかった字はひらがな表記)





人間は湿地で寝ていると腰の病気になって半身不随で死ぬが、鰌はそうではあるまい。
木の上にいるとふるえ上ってこわがるが、猿はそうではあるまい。
この三者のどれが本当の居所を知っていることになるのか。
また人間は牛や豚などの家畜を食べ、鹿の類は草を食い、むかでは蛇をうまいと思い、
鳶や烏は鼠を好む。
この四類の中でどれが本当の味を知っていることになるのか。
猿は犬ざるがその雌として求め、となかいは鹿と交わり、鰌は魚と遊ぶ。
毛しょうや麗姫は、人はだれもが美人だと考えるが、
魚はそれを見ると水底深くもぐりこみ、鳥はそれを見ると空高く飛び上り、
鹿はそれを見ると跳びあがって逃げ出す。
この四類の中でどれが世界じゅうの本当の美を知っていることになるのか。

*毛しょう、麗姫は古代の美人の名前。







常に人々が求める快適な環境、快楽、美しさは
他の動物の基準からしたらとんでもなく的外れだったり、
時には不快なものでしかない事もあるでしょう。
こういったものには、“人間にとって”という利己主義な大前提があるのを
私たちは、当たり前すぎてすっかり見落としてたのではないでしょうか?
それを気が遠くなるほど昔の人間が拾い上げ、今を生きる人間がハッとさせられる。
時代を超えて残った言葉のパワーを感じます。





下手な自己啓発本で即効的な効果を期待するよりも、
こういった古い文に触れた方が、より広い視野でジワジワと心をほぐしてくれると思います。