月刊美術手帖を読む 〜vol62 2010年 7月〜
特集は奈良美智 いつでも旅の途中
セラミックワークに挑戦した奈良さんに対するロングインタビュー。
奈良美智―ナイーブワンダーワールド (別冊トップランナー)
という10年前に出た本を持っているのですが、
今回のインタビューは、その時より言いたいことが明確になっていて、
陶器に携わった思いと、これからについての意思がストレートに伝わりました。
彼の作品ほどガチガチな文章で読み解くのが滑稽に感じるものはないと思っているので、
嵐の大野智さんとのスペシャルトーク、奈良さんをよく理解している
評論家の松井みどり氏による文章、と結構“やわらかく”組まれていて
大満足でした。
その他気になったもの
ビートたけし/北野武 『Gosse de peintre−絵描き小僧』展
カルティエ現代美術財団での個展の取材。
奈良特集の次にこの記事が来る流れはとっても良いと思います。
篠山紀信 『20XX TOKYO』わいせつ事件
話題はガラッと変わって、ヌード写真家の裁判沙汰に対する
著者自身の見解と、事件に対する対談、評論。
児童ポルノうんぬんで色々と物議を醸した、写真家のサリー・マンを思い出しました。
難しい問題です。
・秋元康流 アートのすすめ
佐々木耕成の“全肯定”がテーマの個展を歩く。
前向きな明るさが写真から伝わってきて楽しい気持ちになりました。
・ACRYLICS WORLD52 しんぞう
不気味なような、ふざけているような、妙な不思議な魅力を持った
作家のしんぞうさん。凄い魅力的に感じました。
ARTIST INTERVIEW 村瀬恭子
奈良良智の後輩に当たる、作家さん。
愛知県芸で同じ教授に教えられた作家に共通する“雰囲気”は
素敵だと思います。
・総評
前回の4月号から2ヶ月分飛ばして、一気に7月号。
特集を中心に、受け入れやすい作家を取り上げる反面、
きちっとした美術の問題に切り込む記事も充実していて、
気になる記事がたくさんあり、これでもかなり削りました。
僕個人の好みで、多少贔屓目ではあるにせよ、
攻守のバランスが整った、全体的に読みやすい、充実した号だと思いました。