かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

舐めてました。面白かったです。 映画“明日のジョー”感想

まず映画を語る前に僕の立場を。
・原作は好きな漫画ベスト5に入るほど大好き。
・特番等は一切見てません。
・細々とした情報だけで、ケチつける気満々で観に行きました。


あらすじ(goo映画より引用)

昭和40年代、東京の下町で殺伐とした生活を送る矢吹丈(山下智久)は、その天性の身のこなしから、元ボクサー・丹下段平(香川照之)に
ボクサーとしてのセンスを見出される。ところが、問題を起こしたジョーは少年院へ。そこでジョーは、チャンピオンレベルの力を持つ
プロボクサー・力石徹(伊勢谷友介)と運命の出会いを果たし、ふたりは反目しながらも互いの力を認め、ライバルとして
惹かれ合うようになっていく。

で、率直な感想……






土下座してあやまります。凄く良かったです。



ファンとしては、そりゃ気になる部分も、もちろんあります。
端折り具合(ジョーと段平の出会い)だとか、妙な設定の改変
(白木お嬢様の設定)だとか。

でも、目くじら立てるほどじゃないです。ほんとに些細な事です。
一つだけ許せないことがありましたが、それは後で。)
それを上回る登場人物、ドヤ街の再現度、
そして映画全体から伝わってくる、原作愛。素晴らしいです。



中でもこの映画を支えているのは、キャスト陣。



まず、山ピーこと山下智久演じる矢吹ジョー。
「ジャニーズ使うってどうなのよ。」なんてまあ原作ファンの大半は思ったでしょうが、
顔がボコボコであざだらけになったり、熱の入った練習シーンを演じたりと、
役を演じるに当たっての妥協は、一切感じませんでした。
長セリフが若干寒かったですが。そんな口数が多い
キャラクターではないので許容範囲です。)



そして香川照之演じる丹下段平。熱いです。
眼帯に腹巻の滑稽なビジュアル。あまりに“漫画的”キャラが立っているだけに、
中途半端に演じられると、本当に痛々しいギャグキャラになる恐れがありますが……
本当に細かい部分まで丹下のおっちゃんをやりきってます。なりきってます。
これには、全く文句無しです。



そしてライバルである伊勢谷友介演じる力石徹
ジョーや丹下は初見だとさすがに“ウッ”となるのですが、この人は違った。
もう生き写しとしか思えない再現度
本作がアイドル一本釣り映画で
留めなかったのは、ジョーに勝るこの存在感が大きく貢献していると思います。
まるで実在の人物かのような熱演は、本当に素晴らしかったです。


その他、マンモス西、ドヤ街の子どもたち、記者団、白木財閥の人たちも
抜かりなく演じられていて、
ありがちな、中途半端なキャスティングで寒いやり取りもなく
感動しました。






肝心のボクシングシーンも、かなり本気で作られていました。
話の流れを知っているとは言えども、萎える部分もなく、
邪魔な演出もなく、きちんと拳と拳の殴り合いを感じる出来でした。
ノーガード戦法ばっかじゃねーか、という野次は
原作を読んで下さい。決して改変ではないです。



そして気になる力石との因縁の対決。ネタバレを含むので一応白字で。
力石は原作通り死にます。そこからどう運ぶかで
一気に駄作へと転ぶ危険性もあったのですが、
原作の流れを改変せずに、続編を作れる余裕を残しながら
1作品としてきちんと蹴りをつけました。良かった……



で す が、一つだけ、どうしても許せない事があります。
EDテーマです。
はっきりいいます。雰囲気ぶち壊しです。

宇多田ヒカルは嫌いではないです、歌詞も悪くはないです。
しかしですね、あの歌声と作曲がもうびっくりするほどミスマッチ。
OPに明日のジョーのテーマを持ってこれたのに、どうしてこんなこと出来るのか。
これは残念でしょうがなかったです。
観にいかれる方は、EDが流れる前に走って劇場を抜ける事を強くお奨めします。
宇多田ヒカルファンの方は、別途CDを購入して
明日のジョーと切り離して聴いて下さい。これで皆幸せ。






・総評
観るまでは、実写映画の逆金字塔デビルマン [DVD]が頭をよぎっていた事、
(良くて100デビルマンかなぁ)なんて悲観的にかまえていた事
 (実際は5000デビ……は流石に失礼か。明日のジョーに。) 
この場を借りて、深くお詫び申し上げます。



とにかく、原作ファンとしては納得の作品でした。
続編が発表されたら、喜んで足を運びます。このメンツに不安はないです。
原作未読で、映画が面白かったと思った人はぜひ、原作も読んでみて下さい。
今回描かれたエピソード以降が本当に面白いので。
この映画をきっかけに、たくさんの人が明日のジョーを
好きになってくれると嬉しいです。



最後に。マンモス西はきちんと鼻からうどんを出しました!
ありがとうございました!


あしたのジョー(1) (講談社漫画文庫)