かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

幼年期の終わりを読みました

アーサー・C・クラークの傑作SF、幼年期の終わりを読みました。
光文社新訳文庫は長年読まれてきた名作を今の時代に読みやすく翻訳したものなので、
非常に抵抗なく楽しく読めました。



〜あらすじ〜
ある日突如として地球の上空に現れた大きな宇宙船。そこに搭乗していたオーヴァーロードと名乗る異星人達は
姿を見せることも目的を明かすこともせず、地球を統治して世界に平和をもたらします。
世界は誰もが過ごしやすくなったのですが、依然として彼らは目的を明かしません。
彼らの真の目的は一体?






人間は人間より上の生き物に支配され、監視された経験がありません。
「もしかしたて、我々は自分より高度な生き物の掌で踊らされているのでは?」
というような妄想は誰しも抱くでしょうが、それを“神”ではなく“異星人”で描いたのが本書です。
ただ、異星人の奴隷になってこき使われて戦うといった安易な流れではなく、
むしろ彼らは、不平不満のない平和な世界を築いてくれてる素敵な存在なのです。
(平和によって失われたもの―――芸術の発展や冒険心 もある事をきちんと描写している
用意周到さはさすがです。)




ネタバレになるので詳しく書きませんが、彼らが地球を監視する意味と真の目的こそ
この作品のとても哲学的で面白いところです。

それは人間の思考ではどうにもならない宇宙スケールの壮大な目的。
そして彼らもそれに携わる歯車の1つに過ぎないという果てしなさ……
しかし、“人間より優れた知性を持った生物”も“スケールの大きな目的”も、
しょせん、アーサーという一人の人間が考え出した人間の考えられる範疇に過ぎないと思うと、
なんだか宇宙って途方もない……なんて思ってしまいます。





この作品がのちのSF作品に与えた影響は計り知れないと思います。
それは今日の映画やアニメにもどこかしら刷り込まれているでしょう。
SFをあまり読まない方(実は僕もあまり読まないです)でも、きっと読みやすいので、
ぜひこの夏読んでみることをオススメします。




幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)
クラーク,池田 真紀子

光文社
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