かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

快読・現代の美術―絵画から都市へを読みました。

なんとなく手にとったのですが、とても楽しく読めました。





本書は、『絵画から都市へ』とサブタイトルにあるように
絵画から始まり、写真、映像、ダンス、彫刻、デザイン、工芸、素材、建築、そして都市と
いう流れで20世紀以降の美術史を紐解いていきます。


それぞれは隣り合う分野と密接な関係を持っています。
(例えば写真は絵画に大きな影響を与えましたし、写真の発展により映像が誕生しました。)


しりとりのようにそれらを追っていくと、とても広い視野での現代美術が浮かびあがってきます
(絵画というミクロから都市というマクロまで!)


もし絵画、建築、ダンスという順番だったら、ここまでスムーズに読み進められなかったでしょう。
なんだか「現代美術さん」という人間の紆余曲折な自伝を読むような
そんな痛快さがありました。(なるほど『快読』ですね!)







それと、些細なことかも知れませんが、本書に載っている挿絵は本当に挿絵です。


どういう事かといいますと、白黒でお世辞にも写りが良いとはいえないものが
ちょこんと載っているだけなのです。パラパラっとめくるとなんだか古臭い本のよう。


ですが、読み進めると主張をしすぎず、文章の邪魔をしないように工夫をされて
いるのだと実感しました。


わざわざこんな事を書くのは、挿絵がデカデカと挿入されているあまり、
文章に集中できなくなるような本、とくに美術関連の本にたびたび出会うからです。
パッと見は地味ですが、この配慮は書いてある内容の面白さに自信がある証拠でもありますね。








本書をレビューしてるサイトを探してみたのですが、見当たりませんでした。
20世紀の美術に興味がある方は視野を広げる意味でも、ぜひ手にとってみて下さい。
(僕はそろそろ、退屈という偏見を持ってしまっているルネサンス期を掘り下げたいです。)

快読・現代の美術―絵画から都市へ快読・現代の美術―絵画から都市へ
神原 正明

勁草書房
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