かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

映画-八日目の蝉-とディープエンドオブオーシャン。

八日目の蝉 (中公文庫)
劇場最新作、観てきました。
ちなみに、原作は未読です。


〜あらすじ〜
ある夫婦の元に産まれた赤ん坊の恵梨菜。
彼女は、父親の不倫相手に誘拐され4年間、その女性の下で育てられます。
やがて女性は身元がばれ、逮捕されるのですが、
恵梨菜は今まで誘拐犯を本当の母親と思って育ってきたため、
実の家庭に戻ってもなじめず、ギクシャクした関係で二十歳になります。
そんなある日、彼女の下にフリーのライターが現れ、
誘拐事件について取材を求めてきます。

物語は、20歳の恵梨菜と
誘拐した母親と過ごした4年間が交互して展開されていきます。
ちょっと転びどころを間違えたら、安っぽい自分探し映画になりそうな、
そんな危うさに、ヒヤヒヤしながら鑑賞していましたが、
こういう題材の作品としては、良い感じに話を締めた良作でした。


2時間半という尺に、長さも駆け足も感じなかったのは見事。
昨今の安っぽいテレビ配給映画の王道パターンはしっかり避けて、
邦画独特の、なんだかじめっとした描写が、題材と上手い事フィットしていました。






俳優や個々の見せ方について、もっと感想を書くのも良いのですが、
実はつい最近、“ディープエンドオブオーシャン”という、
題材がそっくりな洋画を見たので、
そちらと“八日目の蝉”を比較してみたいと思います。



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〜あらすじ〜
幸せな家庭に生まれた兄弟と妹。その次男坊、3歳のケリーは
母親に連れられた同窓会で、彼は突然行方をくらまします。
それから9年後、家族が引っ越した先に、サムと名乗る少年が
現れ、やがて家族はその少年が誘拐されたケリー本人だと知ります。
ケリーは、めでたく一家のもとで生活するのですが
誘拐前の記憶が全くない彼は、実の両親とも
兄妹ともうまくいかず……


「他人に育てられた実の子供が年をとって戻ってくる」
という、物語の導入はそっくりなのですが
八日目の蝉”と“ディープエンド〜”を見比べると、
カタルシスの方向が違うことがわかります。



ディープエンド〜”は、育てられた家庭と実の家庭という、
“二つの家庭”に対する“登場人物たち”の“葛藤と苦悩”を、



それに対して、“八日目の蝉”は
事件により引き裂かれた“家族愛、日常”に対する
“主人公”の“苦悩と成長”
を描いています。



ディープエンド〜”がしっとりした作品だったのに対して、
八日目の蝉”がスカッとした後味だったのは、
似た題材を描いているだけに、なかなか興味深い差異でした。
ぜひ、両方観てみる事をオススメします。




〜まとめ〜
劇場で鑑賞していて、一番印象に残ったのが
主演の井上真央と、恋人役の劇団ひとりがキスするシーンで、
左の席のおじさんがものすごい舌打ちをしたこと。
かと思うと、途中でハンカチを取り出して涙を抑える
(ゴシゴシしてたので、おそらく)純情さ。


何が言いたいかというと、下心丸出しで観ても
感動できるって事です。
以上、超蛇足。