かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

月刊美術手帖を読む 〜vol61 2009年 11月〜

これから定期的に美術手帖を読み、ザックリその感想を含めて
まとめようと思っています。
古い号から順々に読むので、最新号の情報を知りたい方には全く意味がないですが
過去の号を漁る参考にはなるかと思います。

美術手帖 2009年 11月号 [雑誌]美術手帖 2009年 11月号 [雑誌]


美術出版社

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特集は茶の湯の美

茶の湯の歴史や有名人物、あらゆる道具から名碗までわかりやすく解説されています。
茶の湯の道具を生み出す人間の視点から、茶の湯の美のココロに対する対談など
様々な視点から“茶の湯”を掘り下げます。


特集をみたときは、正直あまり興味がもてない分野だったのですが、
茶の精神、茶碗や茶室のデザインがとてもモダンで、
現代アートとしても通じる、無視できない側面もあるとわかり、
読み終えた後には、非常に興味が湧けました。


特に印象的だったのが、茶道家 木村宗慎さんの「選ぶという行為の源泉」という文章。

伝統と呼ばれると、一見、カビ臭そうでも、
古典として残された”美”は、あまた選択の果て、
時の移ろいという厳しい試練に耐え抜いたものばかり

鑑賞するときに、良い悪い、好き嫌いという軸だけでなく
ものの持つ時代背景を知り(というと表現が硬いですが)
、どこかで意識しながら眺めるのも大切だと思いました。





もう1つの特集は日本画家、速水御舟
この号がでた頃、山種美術館速水御舟の展覧会がやっていました。


ずばり内容は、速水御舟の“本来の見方”。
御舟から感じるものと、世間での持ち上げられ方のギャップが
森村泰昌さんと山下祐二さんの対談でわかってきます。


二人の対談はとても感覚的でいながら鋭く、納得いく考えもちらほら。
御舟の評価に違和感を持つ人は一度読んでみることをおすすめします。





その他気にったもの


・ACRYLICS WORLD
作家、天明屋尚についてちょろっと特集。
ページの問題で明らかに言い足りない感がひしひしと。


秋元康流アートのすすめ
夜警をしながら刺繍作品を作った作家の
仕上げるために要した時間が4554時間というのに驚いた。


・ARTIST INTERVIEW
中国の作家アイ・ウェイウェイ
インタビュー内容うんぬんというより、
その3ページ後の展覧会レビューの冒頭で批判を喰らっていたのに
笑ってしまった。





総評
一冊読みきったのは初めてなので比べる事ができないのですが、
茶の湯特集が凄く充実していたので、茶の湯初心者としては満足です。
しばらくは順に読んでいこうかと思いますので、次は2009年の12月号です。


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茶の本というより、日本人の美意識についての本。