かにみそにっき

作家。美術書などを中心に、本・絵本・映画についてのメモ。

谷川俊太郎質問箱を読みました。

実は谷川俊太郎さんの作品は全く読んだことないです。
表紙が可愛らしかったので思わず手にとっただけです。
(ほぼ日はそういうところが巧みだなぁと思います。)



谷川さんがほぼ日の読者から届いた質問に答えるという本なのですが、
一ヶ月前に読んだ生協の白石さんのようなものを期待していました
(谷川さんのイメージがぴったり白石さんのイメージだったのです)
がほのぼのとしたお悩み相談本とはちょっと違いました。

たとえばこの質問。

ぼくは詞を書いたりしていますが、
完璧だ、これ以上ない、と思う作品ほど、
あとになってダメな部分が
目立ってくるような気がします。
それはどうしてでしょう。
スチャダラパー ボーズ 三十八歳)

この質問に対する谷川さんの答はこちら


完璧だ、これ以上ないと思うのは、
ほとんどの場合、自己陶酔ですねー。
酔っ払いが自分に甘くなるのと同じで、
自分が書いたものに甘えちゃってるから、
完璧だなんて思えるんでしょう。
あとになると酔いがさめて、
ちょっと引いた他人の目で
見ることができるようになるから、
自分に厳しくなるんですよ。
ぼくは自分が書いたものに
始めから終わりまで疑問をもっているので、
あとでがっくりくることもあまりありません。


この回答のように、谷川さんはどこか悲観的に物事を捉える面があって
悩みが解消するどころか、時には突き放したり
さらに悩むような答を返したりしています。
答をどーん!と突きつけないのですよね。
そこが妙に人間臭くて読んでいて、とてもおもしろいです。



あとがきにも書いてありますが、谷川さんは個々の質問に
あまり考えこまずに素早く答えたそうです。
だから一つ一つの答に“そのときの気持ち”という新鮮さが残ってます。
気持ちは常に移り変わる、だから答も一瞬ごとに違ってもおかしくないはずです。



こういうときはこう受け答えるべし、というハウツー本に、人は絶対を求めたく
なりますが、刻一刻と世界は変わるので絶対なんてそもそも何もない のです。
人が知らず知らずのうちに求めてしまう、そんな型を
破りながら、進もうとする谷川さんの若々しさを感じました。

谷川俊太郎質問箱谷川俊太郎質問箱
谷川 俊太郎,江田 ななえ

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